「デザインって面白い」と思えたこの数年間
これまで1年間にわたり更新を続けてきたコラムですが、今回で一旦の区切りとなります。
ひとり法人デザイナーとして走り続けてきたこの数年間。
多くの経験をし、慣れない業務に苦戦したこともありました。それでも続けることができたのは「デザインってやっぱり面白い!」と思えたからです。
本コラムでは、デザインの面白さを改めて実感したエピソードを振り返ってみようと思います。
課題を解く楽しさがある
クライアントさんがイメージしているデザインを具現化するのがデザイナーの仕事のひとつ。
しかしただ見た目が良いデザインにするだけではなく、企業のブランドイメージや目的に沿ったものにする必要があります。
「抽象的な要望を、どう形にするのか?」
「制限のあるなかで、どう表現するのか?」
などの課題は、デザイナーの経験やセンス、技術が試されます。
以前このようなケースがありました。
クライアントさんからご依頼いただいたのは、パンの包装デザイン。見た目がおいしそうで、店頭に並んでいるときに手に取ってもらえるデザインに仕上げることが、私のミッションでした。
通常であれば「ああして~、こうして~」とイメージしやすいご要望ではあるのですが、今回は大きな制約があったのです。
それは「デザインに使用できる印刷色は4色まで」ということ。しかも白の特色(特別に調合されたインク)を使用する必要があったため、実質3色で全体を構成しなければならない状況でした。
おいしそうに魅せる必要がある食品パッケージは、赤や黄色、茶色などをたくさん使いたくなるもの。パンに至ってはグラデーションで焼き色を表現したり、多色使いで立体感を出してふんわり感を演出したりするのが王道です。
手札を失った状態でどうやって「おいしそう」「あたたかみ」「安心感」が伝えられるパッケージをデザインできるのか?まさに腕の見せ所です(笑)
使用できる印刷色は4色(実質3色)・・・
そして印刷素材は透明フィルム・・・
そこで私が辿り着いたのは、白インクを使わずに“抜く”ことで、透明感を出す演出。透明フィルムの特徴を活かして「白インクを使わずに“抜く”」という技法を取り入れたことで、パンそのものが見えるデザインにしたのです。
次に頭を悩ませたのが「どこを透明にするのか?」でした。サイズ感はもちろんのこと、抜く場所を間違えてしまうとパンを見せられなくなってしまいます。
最終的に、パンの焼き色やふんわりとした質感を伝えたい部分にのみインクをのせ、余白やハイライトはあえて透明に。中身のパンを透けて見せることで、立体感とおいしさが際立つデザインに仕上げられました。
魅せるところ、隠すところ、透けさせるところのバランスを細かく設計する必要があり、とても頭を使いましたが、制約があったからこそ生まれたデザインです。
制限というハードルがあったから、思考を凝らし「あの手この手で」工夫する楽しさを実感したエピソードでした。
人と出逢う楽しさがある
デザイナーの仕事はパソコンに向かってひたすら作業するだけではありません。
クライアントさんの思いや目的、イメージなどを打ち合わせしながら共有し、形にしていきます。
時には一緒に悩んで試行錯誤することもあります。
頭を悩ませ、なかなかデザインが生まれない日もありました。
デザイナーとして活動する中で全てを救ってくれるのが、クライアントさんからいただける
「そうそう!こういうのが欲しかったんです!」
という一言。
この一言はとても嬉しいだけではなく、デザイナーをしていて本当に良かったと思える瞬間です。
また法人になったことで地域との関わりが増えたり、他業種とのコラボレーションができたりなど、より世界が広がりました。
さまざまな人とつながり、仕事の話して、新しいものを生み出すー
デザインという仕事が「人と人をつなぐ」ということにも気づきました。
自分の成長を感じられた
この数年間で変化したのは私自身でした。
法人化したことで「自分が決める」機会が増え、主体性が育ったと思います。
3年前の自分ではできなかったことが、今の私は当たり前にできるー
これだけでも自信につながります。
自分に自信がもてると、仕事がさらに楽しくなりますよね!
知識やスキルも増えましたが「考え方」が変わったことは、私にとって大きな一歩でした。法人化しなければ、気づけなかったこともあったかもしれません。
ちょっとした転機やこれからのこと
法人化してから大変なこともありましたが、私はデザインの仕事が大好きです。
人とのつながり、人の思いをデザインにする楽しさを強く実感した数年間だったのは間違いありません。
私は来年から新しい環境に身を置くことを決意しました。
好きな仕事だからこそ、一度違う立場からデザインに携わりたいと考えるようになったのです。
環境が変わってもデザインの面白さは変わりません。
きっとこれからもデザインという仕事を続けていくと思います。
デザインはやっぱり面白い
来年から新しい環境に身を置くため、1年間続けてきたコラムは一度区切りをつけることにしました。
私自身、「デザインとの関係性」を見直すことができたこのコラム。
この数年間を改めて振り返ったときに「楽しかった」と言えることが、とてもありがたいと思っています。
これまで読んでくださったみなさん、ありがとうございました。
いつかまた、どこかでー